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橋口潤平/HASHIGUCHI JUMPEI

カラフルで楽しげでどこか不穏な幻想を表現

2024.03.21 UPDATE

 一人っ子だった私は、子どもの頃から暇さえあればマンガの模写やイラストを描いていました。実家の隣が絵画教室で、ご近所付き合いの中で水彩画を描く機会もあり、「絵を描く」ということが自然な環境だったと思います。幼稚園の頃に買ってもらったロジャー・ディーンの画集は、その奇妙でカラフルなファンタジーの世界に驚き、大人になるまでずっとお気に入りの一冊でした。
 大学でも美術を学び、卒業後は札幌で作品の販売や企画展に参加するなど、アクリル画をメインに創作活動を続けていましたが、30歳手前で福祉職に就いてからは10年間ほど絵を描いていませんでした。そんなある日、長男が遊んでいる風景を何ともなしに油彩画で描いてみたところ、今までにない「自分の表現の予感」がして、そのタイミングで油彩画に切り替え、再び絵を描き始めました。
 日々の経験や記憶、感動は、作品にも影響を与えています。例えば20代の頃に友人と旅行したスコットランド。人も建物も色鮮やかなのに、気候が関係しているのか、どこか重々しく暗い雰囲気があり、その不思議な空気感はずっと印象に残っています。ほかにも、演劇や舞踏を見に行った際に感じる、目の前でエネルギーが動き、熱が発生しているという感覚がすごく好きで、影響を受けている部分が少なからずあると思います。
 創作する上でもっともインスピレーションを受けるのは、やはり「人」です。踊っている人、食べている人、働いている人、何かよくわからない人。ここ2年ほど劇団の稽古や稲作農家の取材に行くことが何度かあり、その中で目にした動きや雰囲気を絵に変換する機会が多々ありました。
 今回の個展のテーマはファンタジーです。私の絵画感はファンタジーで始まっているので、原点回帰しようという思いがありました。札幌で活動している俳優・舞踏家の柴田智之さんと音楽家の林ヒロトさんをモデルにした「人間」、不思議なダンス会をイメージした「そのタンツェーリン飛んであのタンツェーリン飛ばない」、色々あるけれど、さぁ踊って!という気持ちで描いた「踊ってまるっきりこんなふうに」などの過去作に加え、新作も発表します。カラフルで楽しげで、どこか不穏な幻想を表現したいと思っています。
 今後の創作活動として考えているのは絵本を作ること。子どもたちに鮮やかでヘンテコでちょっと不思議な世界を見てもらいたいと思っています。

人間

そのタンツェーリン飛んであのタンツェーリン飛ばない

踊ってまるっきりこんなふうに

気分はバナナ
バナナは誰も傷付けないかもしれない楽しい色と形。忙しい時にも良いですが、滑ります。そんな世界を描きました。

36号線の夜
札幌で活動されている劇団THE36号線の稽古風景です。まだ完成に至っていない状態の舞台独特のエネルギー感を表現したく、取材させて頂きました。

Profile

橋口 潤平

1982年生まれ、釧路市出身。恵庭市在住。道都大学美術学部卒。 二十代はアクリル画の制作を中心にPAUL名義で個展、企画展等の活動を行う。 現在は油彩画制作を中心に橋口潤平名義で活動。
●インスタグラム
@junpei_hashiguchi

【入場無料】

北海道文化財団アートスペース企画展 vol.55
橋口潤平個展「橋口潤平と個展 其の三」

2024.3.26~5.30 9:00~17:00 ※土日祝休館 ※都合により臨時休館する場合があります。
場所/札幌市中央区大通西5丁目11大五ビル3F 問い合わせ/011-272-0501

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