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伝わる文化

伝統と平和と(いつもより少しまじめ)。

すーさんの「伝わる文化」おかわり 【四杯目】

2022.12.09 UPDATE

真狩村の「浦安の舞」は村の無形民俗文化財指定を受けています。
村としても守るべき文化であると考えているわけですね。

「浦安の舞」は1940年に作られた、いうなれば新しい舞です。
とはいえ今年で82年、なかなかの継承具合です。
一般的に、民俗芸能が国や地方自治体で文化財の指定を受けるには、ある程度長く伝えられていることが求められますが、明確に何年以上というのはありません。
50年、とか100年、で切ってしまったら、じゃあ49年とか99年とかはダメなのか、来年だったらいいのか、な話になってしまい、それはいくら何でも変ですよね。
だから、まずはその地の宝(財)、であることが必要なのですね。

民俗芸能というと、なんとなーく昔から伝えられている、というイメージがありますが、必ずしもそうではありません。
新しく持ち込んだ、あるいは始めた芸能も、その地域の人々が主体となって行うものであれば民俗芸能ということができるでしょう。
どんな芸能も、始めたときは新しい芸能です。
また、芸能は時代時代に合わせて残ってきたものですから、必ずしも昔の形にこだわらなくてもいいんじゃないかな、と個人的には思います。
昔の形をしっかり理解したうえで新しいものも取り入れていく、というのが芸能そのものの発展にもつながるのでは?と思ったりもします。
現に、伝統芸能である歌舞伎も、漫画の「ワンピース」を題材にしたり、3D映像を用いたりと、時代を常に意識しています。

さて。
「浦安の舞」は1940年、皇紀2600年の奉祝式典のために作られたというのは既に説明されているところですが、皇紀とは西暦とは違って、日本の最初の天皇である神武天皇が即位された年から数えるものです。
神武天皇が即位したのは西暦で紀元前660年2月11日と言われています。
2月11日は建国記念の日ですね。
神武天皇のお父さんは鶿草葺不合尊(ウガヤフキアエズノミコト)と仰って、おそらく皆さんもご存知の「海さち山さち」のお話の主人公山幸彦と豊玉姫の子どもです。
神武天皇は山幸のお孫さんになるのですね。へー。

その皇紀2600年に作られた、有名なものがもう一つあります。
「ゼロ戦」「零戦」という戦闘機の名前を聞いたことがあるでしょうか。
第二次世界大戦時に日本の戦闘機として登場した「零式艦上戦闘機」です。
この年、2600年の下二けたが0であったため、「零式」と呼ばれ、略称が「零戦(ぜろせん、れいせん)」となりました。
同じ年に平和と安寧を祈る「浦安の舞」と、戦いに向かう零戦が生まれたのは歴史のいたずらなのでしょうか。
零戦は今も博物館などで見ることができ、動くものもあるそうですが、たとえ飛べても、二度と戦地に赴くことのないように願いたいです。
一方で「浦安の舞」は今も全国各地の神社で見ることのできる舞です。
この年に生まれたからこそ、「浦安の舞」の平和への願いは強いのかもしれませんね。
機会があれば是非真狩村で見てください。
真狩村で見れなかったら他で見てもいいです。

美しい舞に触れて、日本の伝統を知り、そこに込められた意味を知り、継承していくことができれば、それがそのまま平和への祈りとなるのではないかしら、と、遠い地にも思いを馳せた次第でした。

角 美弥子(すみ みやこ)
北海道教育大学岩見沢校芸術・スポーツビジネス専攻准教授。
修羅の国出身。無形の文化財の保存継承を研究対象とする。授業では正しい琵琶の見分け方に時間を費やす。好きな能楽の曲は「猩々」。酌めども尽きぬ甕が欲しい。
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