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特集

コンドルズ札幌公演
「Blowin’ in the Wind」

2023.10.20 UPDATE

ダンスカンパニー「コンドルズ」が、2023年11月に12年ぶりの札幌公演を行います。2023年6月25日、多くのファンが足を運んだ幕別町百年記念ホールでの公演終了後に、主宰の近藤良平さんにコンドルズの活動や待望の札幌公演についてお話を伺いました。
PHOTO/表紙:©HARU、インタビュー写真:溝口明日花(マカロニ写真事務所)


 

 
―久しぶりの幕別公演、お疲れ様でした!

 13年ぶりの幕別町でした。会場の「幕別町百年記念ホール」は1996年に開館したのですが、実はコンドルズの結成も1996年。お互い誕生から27年という同い年で、不思議な縁を感じる会場です。

―今日は老若男女、たくさんの方たちが客席を埋め尽くしていて、終始大盛り上がりでしたね。

 コロナ禍を経験した誰しもが思うのだろうけれど、客席の盛り上がりを見ていると、劇場やコンサートに通って楽しむ日々を「取り戻した」という感覚がありました。みなさん手放しで喜んでいて、私たち自身もそれがとても楽しくて、自由な空気を感じることができました。

―近藤さんは以前受けていたとあるインタビューで「コロナ禍だからこそ表現を続けていく、作っていくという動きが出てくるだろう」とお話しされていました。今改めて振り返ってみて、コロナ禍はコンドルズや文化芸術にとって、どんな時間でしたか。

 僕は基本的にポジティブな人間だから、当時もずっと前向きな発言をしていましたよね(笑)。コロナ禍という大きな出来事の中でも、コンドルズは一度も止まることなく活動を続けてきた、と自負しています。若い人たちにとっては目新しいものではないかもしれませんが、YouTubeを中心にした動画配信にも力を注ぎましたし、2022年の東京公演では、感染状況などから中止の決断をしましたが、無観客での生配信公演にも挑戦しました。この期間に、コンドルズなりにこれまでと違う表現方法を模索した結果、アブクの状態ではあるけれど、新しいものが生まれてきそうな予感はあって。まだアブクの破裂には至ってはいないけれどね。でも、コロナ禍はマイナスだけではなかったかな。そして、客観的に見ても、誰ひとり欠けることなく、コンドルズがこうして続けてこられたのは、素直にすごいことだと思っています。

―解散を余儀なくされる団体も多い中で、一人も欠けることがなかったというのは、本当に凄いことですよね。

 一方で、僕は多摩美術大学の演劇舞踊デザイン学科で教員もしているのですが、学生たちと関わっているとコロナ禍がもたらした課題を強く感じます。例えば、今の大学一年生は、高校3年間がマスクで始まってマスクで終わっているんですよね。学生時代というのは、人生の中で多くのことを得るべき時期です。その大切な時期に、彼らは閉塞感のある日々を送ることになってしまった。音楽やダンスや演劇など、劇場に足を運ぶとそこにはたくさんの面白いことがある、ということを体感することが難しい状況にあった。僕たち大人は、たくさん経験した中で一時的にそうした行動に制限をかけられたけれど、若者たちの多くは楽しみを知る前でしたからね。だから、創作することがどれだけ楽しくて、自由度のあることかということを、しっかり伝えていきたいと思っていますし、そうしないとまずいと、この先の文化芸術の未来を考えて危機感も覚えています。若者たちにはもっとワクワクしてもらいたいですよね。僕たちは大人として、表現者として、若者たちを刺激していかねばならないと思うんです。

―今日のように劇場に足を運ぶことは「文化芸術の面白さ」を実感し、刺激を受ける機会のひとつですよね。地方を巡るというのはコンドルズにとっても刺激になりますか。

 刺激はすごくありますね。地元の食事も地元の人との会話も、僕もメンバーも大好きですから。目的を持って旅をして、人と触れ合い、発表するということは非常に意義のある行動ですよね。コンテンポラリーダンスは、一般的に知られるヒップホップやクラシックバレエとは異なり、メディアを通して目にする機会が少ないジャンルだと思います。さらにコンドルズは、コンテンポラリーダンスという括りの中でも、かなり変わったパフォーマンスをしています。よくイメージされるような、ダークな印象や、深い考えを必要とするダンス作品よりも、ぐっとエンターテインメントに徹しているので、3世代一緒に観て楽しめるステージなのですが、こればっかりは実際に体感してもらわないと伝わらない部分もありますよね。公演を観に、各地から様々なジャンルのダンサーが会場に足を運んでくれるのも嬉しいです。今日も中標津町から観に来てくれた人がいたりして、各地でジャンルを超えたダンスの繋がりが生まれていくのも刺激になります。

 

 

―近藤さんは北海道文化財団の「こどもアート体験事業」で、何度も北海道を訪れていますよね。

 10年近くに渡り、本当に色々なところに行かせてもらいました。なかでも奥尻町で行なったダンス教室(2008年開催「近藤さんと踊ろう」)のことは今でも鮮明に覚えているんですよ。現地の皆さんが本当に協力的で、ウェルカムな空気がいっぱいだったんですよね。海産物も豊かだけれど、実は町内でお米も作っていたり、様々なものが揃った完璧な町だということを、訪れて初めて知りました。子どもたちもみんなユニークで、話し合っていると色々な発見があってとても楽しかったです。あとは、町中に馬がいる新冠町も印象的でした。子どもたちのご両親もほとんど馬に関わるお仕事で、楽しく会話をしていたら「土地が欲しかったらあげるよ」って声をかけてくれる人もいて、少し心が揺れました(笑)。

―(笑)。個人では何度も訪れている北海道ですが、コンドルズとしてはかなり久しぶりですか?

 2016年にコンドルズ結成20周年記念全国ツアーで行った中標津町での公演が最後でしたから、7年ぶりになります。久しぶりの北海道はやはりとても楽しいですね。今日も感じたけれど、いつも海外公演のような感覚になるんですよね。6月だと東京は梅雨の時期だけれど、北海道はいつも爽やかで、光が射していて、羽が伸ばせるというか。今日ものびのびと楽しむことができました。
 

 

―客席には子どもたちの姿がたくさんありました。今日の公演が文化芸術に触れた原体験になる子もいたでしょうね。

 実は今日、とても感動的なことがあったんです。13年前の幕別公演をお父さんと一緒に観たという当時小学生だった女の子が観に来てくれたんです。お父さんは仕事が忙しくて来られなかったからと、一人で会場に来てくれて。すごく嬉しかったなぁ。

―11月は久しぶりの札幌公演です。きっと新たな出会いが待っていますね。

 札幌はコンドルズとしても、僕個人としてもかなり久しぶりなのですが、記憶に残る経験が多い街です。僕は、札幌の「ダンススタジオ マインド」の代表・宏瀬賢二さんと交流があるんですよね。このスタジオは、ヒップホップやジャズダンスが主体なので、僕とは分野が違います。けれど、宏瀬さんは非常に懐の深い方で、「近藤さん、面白いから何かやってみて」と声をかけてくださったことがあって。普段はヒップホップやジャズダンスを中心に活動しているダンサーたちに、かなり奇抜なことに挑戦してもらったんです。そしたら、それをきっかけにダンスの価値感が変わり、独自の路線を進んでいくようになった人もいて(笑)。これも結構昔の話なのですが、「自分の職業の制服を着たままダンスをする」というワークショップを札幌で行ったことがあって、看護師やバスの運転手、お坊さんと、想像以上に様々な職業の人が集まって驚きました。こんな経験、札幌だけですからね(笑)。すごいな、札幌!久しぶりの札幌公演、どんなことが起こるのか。とても楽しみにしています。

 




幕別公演後はキャスト自らが物販スペースに立ち、サインに応えたり、会話を楽しむなど、終始和やかな雰囲気でした。
 


こんどう・りょうへい

コンドルズ主宰。ぺルー、チリ、アルゼンチン育ち。第67回芸術選奨文部科学大臣賞受賞。第4回朝日舞台芸術賞寺山修司賞受賞。第67回横浜文化賞受賞。 TBS系列『情熱大陸』、NHK総合『地球イチバン』等出演。NHK教育『からだであそぼ』内「こんどうさんちのたいそう」、NHK総合『サラリーマンNEO』内「テレビサラリーマン体操」などで振付出演。NHK連続テレビ小説『てっぱん』オープニング振付も担当。NHK大河ドラマ『いだてん』ダンス指導、「私立恵比寿中学」振付など、映画、TV、PV、CMなど、振付多数。

コンドルズとは?

あの「紅白歌合戦」のNHKホールを即日完売+追加公演、世界30ヵ国以上で公演、ニューヨークタイムズ紙絶賛、男性のみ学ラン姿でダンス・生演奏・人形劇・パフォーマンス・映像・コントを展開するダンス集団です。
https://www.condors.jp/
https://www.youtube.com/@user-er5qs1hu2f/videos

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