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公益財団法人北海道文化財団・
公益社団法人落語芸術協会協定事業
北芸亭・寄席演芸講座

2023.03.31 UPDATE

「北芸亭」は2021年より始まった春風亭昇太師匠がプロデュースする落語会。伝統芸能の発展を目的に、北海道文化財団と落語芸術協会が協定を結んだ全国的にもあまり例がない取り組みです。2022年は人気の落語家、講談師、浪曲師らを講師に迎え、実演を交えながら解説するワークショップ「寄席演芸講座」を開催。子どもから大人まで、幅広い年齢層で賑わった講座の様子をレポートします。
PHOTO/佐々木良子 取材・文/市田愛子、菅谷環、悦永弘美


 

第1回 昔昔亭A太郎の熱血!落語入門講座

 
2022年6月18日(土)

 寄席で落語を聞く機会はあれど、師匠から直接、落語の“いろは”を学べる機会はそう多くはありません。開講前から期待に胸を膨らませていた参加者の前に出囃子とともに登場し、大きな拍手で迎えられた昔昔亭A太郎師匠。寄席演芸講座のトップを飾る「落語入門講座」ということで、まずは落語家になるまでのプロセスを紹介してくれました。27歳の時に弟子入りした桃太郎師匠とのエピソードなど、自身の修業時代の経験を交えながら、苦労も笑い話に。さらに扇子や手ぬぐいなど小道具の解説や落語表現の基本を直接指導したりと内容は盛りだくさん。参加者も夢中になって講座を楽しみました。最後は落語「野ざらし」を披露。終始、笑いの絶えない熱血指導で会場を大いに盛り上げてくれました。

 

講座には噺家を夢見る中学生も参加し、高座で落語を披露する場面も。緊張しながらも師匠直々にアドバイスをもらい、感激の様子。
 

 

扇子を箸に見立てて、蕎麦をすする仕草を直接指導。「こんな機会はめったにない。いい思い出になりました」と参加者も大満足。
 

 

A太郎さんの講座は終始笑いが絶えず、大盛り上がりでした。
 

 

キセルや釣竿、箸など扇子は様々な見立てに活用されます。
 

 

なんと着物の着付けまで教えてくれたA太郎さん。
 


昔昔亭A太郎
(せきせきてい・えーたろう)

1978年、岐阜県出身。(公社)落語芸術協会に所属する落語家。テレビの制作会社で放送作家を志していたが、落語に出会い、2006年、昔昔亭桃太郎に弟子入り。2010年に二ツ目昇進、2020年5月より真打ちに昇進。第一回渋谷らくご特別賞「奇妙な二つ目賞」
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第2回 神田京子のワクワク講談塾

 
2022年8月27日(土)

 パンパン!と張り扇を叩く良い音が響いたのは神田京子先生の「ワクワク講談塾」。この日、テキストとして配られたのは「いざ鎌倉」のもとになった「鉢の木」のなかの「佐野源左衛門駆けつけ」です。源左衛門が鎌倉に駆けつける時のいでたちを語った一節で、テキストには張り扇を叩くタイミングや音の強弱が記されていて、まずは全員で読み上げ練習。その後、一人ずつ高座に上がり、いざ実践。参加者の中には音楽や演劇に携わっている方もいて、京子さんはそれぞれの個性に合わせて表現を足し引きしつつ丁寧に指導してくれました。「講談師は優れた文章を届けることに徹するのが大切。聞き手が自ら感情を注いでくれるのが、講談の面白いところです」と語り、深い頷きと拍手の中で1時間半に及んだ熱のこもった講座を締めくくりました。

 

「目を見開き、大きな声を出して最初の一言を発すると印象が変わりますよ」と京子さん。講談塾のアドバイスは日常生活の会話術にも役立ちます。
 

 

普段は舞台役者だという参加者は、発声が完璧なので、少し踏み込んで音の緩急と高低で表現する古典口調の響き方をレクチャー。
 

 

当日参加者に配られた張り扇は京子さん自らの手作りでした。
 

 

軽妙な語り口で参加者の心を一気に引き込みました。
 

 

「正面を見据えることで声に自信が生まれますよ」と京子さん。
 


神田京子
(かんだ・きょうこ)

1999年、二代目神田山陽に入門、2014年に真打昇進。2020年より山口・東京の2拠点で活動を始める。山口県出身の童謡詩人・金子みすゞの人生や作品を講談に仕立て、令和三年度(第76回)文化庁芸術祭賞優秀賞受賞

第3回 玉川太福・曲師玉川みね子の浪曲入門講座

 
2022年10月10日(月)・祝

 「旅〜ゆけ〜ば〜」。これは古典芸能に詳しくない人でも、誰もが一度は耳にしたことのある浪曲「清水次郎長伝」の冒頭です。玉川太福さんと曲師・玉川みね子さんによる浪曲入門講座は、名作の一節から始まりました。講談、落語に次いで、明治初期に浪花節として誕生し、大正・昭和に発展した浪曲の歴史から、浪曲の楽しみ方、関東節と関西節の違いなど基礎知識に加え、節の回し方までを紹介。太福さんの修業時代を語った浪曲に、会場からは大きな笑いと拍手が起きました。後半は太福さんの声に合わせて参加者が心の中で「唸り」に挑戦。2名が登壇して、習いたての浪曲を披露しました。最後は玉川一門のお家芸で、浪曲の中でも人気の演目である「国定忠治」で会場を一つにしました。

 

質疑応答の時間には、太福さんがこれまでに披露してきた演目への質問や、みね子師匠の三味線についての質問などが活発に飛び出しました。
 

 

「どなたか唸ってみませんか?」の呼びかけに、初めは恥ずかしがっていた参加者も、太福さんのサポートで「唸り」に挑戦。貴重な機会を得ました。
 

 

時折、浪曲の節を交えながら進んだ入門講座は迫力満点でした。
 

 

打ち合わせなしでも、息がぴったりの太福さんとみね子師匠。
 

 

壇上で「唸り」を体験した参加者から「気持ちいい!」の感想が。
 


玉川太福
(たまがわ・だいふく)

1979年、新潟県生まれ。演劇や演芸の世界に憧れ、作家の道を志していたとき、寄席で浪曲に出合い、衝撃を受ける。2007年、27歳で二代目・玉川福太郎師匠に入門。文化庁芸術祭大衆芸能部門新人賞や浅草芸能大賞新人賞を受賞。

 

第4回 瀧川鯉丸のはじめてのらくご

 
2022年12月3日(土)

 全4回の講座も、ついにこの日が最終回。ラストを飾るのは瀧川鯉丸さんです。「皆さんには最初からプレーヤーとして参加してもらいます」と切り出し、早速参加者を高座に上げる鯉丸さん。お辞儀や次の演者のために座布団をひっくり返す「高座返し」を学びながら、参加者は自分の趣味や特技、好きなものを交えた自己紹介に挑戦。「落語というのは日常会話の延長なんですよ」と鯉丸さんが話す通り、合いの手を入れながら話を膨らませると、単純な自己紹介にも起承転結が生まれます。最初は恥ずかしがっていた参加者もしゃべりに自信がつく実践的な講座となりました。後半は、鯉丸さんによる古典落語の演目「武助馬(ぶすけうま)」に加え、会場のリクエストに応える形で特別に「寿限無(じゅげむ)」も披露。参加者は聞き手に戻って落語を存分に堪能しました。

 

本講座最年少参加者で、落語の絵本が大好きだという6歳の女の子。美しいお辞儀の作法を学びながら元気に自己紹介を行いました。


「落語は大衆演芸です。気構えも緊張も必要ないんですよ」と話し、高座に上がる参加者たちの緊張感をほぐしてくれました。


頭から参加者と掛け合いながら、会場を温めた鯉丸さん。


プロの落語に聞き入る参加者の皆さん。


前日の深川市の小学校で行った鯉丸さんのワークショップにも参加したという小学生。講座終了後も熱心に話を聞いていました。
 


瀧川鯉丸
(たきがわ・こいまる)

1987年、神奈川県生まれ。2011年、瀧川鯉昇に入門し、前座名「鯉〇」で4年間の前座修業。2015年、二ツ目に昇進「鯉丸」となる。2019年、第11回「前橋若手落語家選手権」準優勝。都内寄席のほか、延べ200以上の学校公演に出演している。

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