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泊 和幸/遠別町

自然写真家・株式会社「野生塾」代表取締役

2022.08.26 UPDATE
作る人

 
 北海道北部を流れる遠別川。空中の一点に留まり、水面の魚を狙うミサゴに、傾斜地に構えた自作の小屋の中でカメラを向けるのは自然写真家の泊和幸さん。「ミサゴやオジロワシなど様々な野鳥が魚の争奪戦を繰り広げていて、キツネもヒグマもいる。遠別川には食物連鎖がしっかりとあるんです」
 生まれ育った遠別町で写真を撮り始めたのは50年近く前のこと。遠別の大自然は子供の頃からの遊び場。昆虫採集から始まり、動植物や風景を絵で表現しようとしたものの「才能がなくてね(笑)。遠別農業高校在学中に写真を始めてみたらのめり込み、以来、農業の傍ら写真を撮り続けてきました」とそのきっかけを振り返ります。

豊かな緑の中を悠々と流れる遠別川。 「私の撮影スタジオであり、野生動物にとっては レストランでもある」と泊さん

この日は塾生と二人で撮影用の小屋にこもっていた

 日々、命の攻防を繰り広げる野生動物たちは、音や気配など些細な変化にも敏感です。「川や草木、野生動物を含め環境にはリズムがあります。例えば私が決定的瞬間を前に、気持ちを昂らせてシャッターを切ろうとすると、そのリズムは崩れ、彼らは異変を察知してその場を離れてしまう。気配を消し、自らも風景の一部となることが大切です」と語ります。
 「これまで一人で撮影していたけれど、60歳を境に遠別の魅力を積極的に伝えたいと考えるようになった」と、2015年に株式会社野生塾を設立。道内外より集まった30人近い塾生に撮影技術や遠別町の魅力を伝えながら、フォトグラファーとしての歩みを続けています。

「威風堂々とした姿で雪原を歩く十字ギツネ」(撮影/泊和幸)

「大物の魚を捕えるミサゴ」(撮影/泊和幸)

 現在は、秋に出版予定の写真集のために「ここで書く文章の方がリアリティがある」と、撮影現場で原稿も執筆中。
 「獲物を前に、同じ種族同士は無駄な争いを避けて順番待ちをするなど、野生動物には風格と秩序がある。命は儚く、美しい。自然破壊により、この50年で遠別の生態系は大きく変化しています。写真を通して問題提起をしつつ、これからもこの地の“今”を撮り続けます」

Profile
 

泊和幸(とまり・かずゆき)

遠別町生まれ。遠別農業高校在学中に野鳥の撮影を始め卒業後、農業の傍ら野生動物の撮影を続ける。2015年、株式会社野生塾を設立。著作に「鷲たちとボクの30年」、「海ワシ物語」(源草社)、「飛べない白鳥ハク」(彩流社)等。現在新作を制作中。

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