北海道南西端の日本海上に浮かぶ奥尻島。海岸線には奥尻島のシンボル「鍋釣(なべつる)岩」や「カブト岩」など、風雪や波によって独特の形状を描いた奇岩が並び、奥尻ブルーと呼ばれる澄んだ海に映えています。
「奥尻ワイン」のエチケット(ラベル)は、この心惹かれる絶景を再現しています。
「ボトルを傾けることは奥尻島をめぐること」をコンセプトに、エチケットを奥尻島一周に見立て「鍋釣岩」を基調に、奥尻島に点在する奇岩や小島を配置。ワインと共に島の景色に思いを馳せる、奥尻愛を感じるデザインに仕上がっています。
「奥尻ワイン」は、震災のあった島というイメージを明るい印象に変えていきたい、という思いを込めて開発された。コロナ禍で一時売り上げが落ち込んだものの、今年度は前年比倍以上の売り上げを見込んでいる。
左から「カブト岩」、「屏風立岩」「鍋釣岩」、「無縁島」、「モッ立岩」。いずれも奥尻島に実在する岩と小島で構成されている。
「鍋釣岩」は中心が自然侵食により空洞になっていて、鍋の取っ手(つる)に似ていることが名前の由来。夜にはライトアップされ、幻想的な姿を魅せている。
2008年に創業した「奥尻ワイナリー」は日本初の離島ワイナリー。空港近くの高台に広がる葡萄畑はかつて牧草地として使用されていた場所で、メルローやシャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・グリ、ツヴァイゲルトレーベ、ケルナーといったワイン用品種のほか、山葡萄など約65,000本が栽培されています。
ワイン造りのきっかけは、1993(平成5)年7月に発生した北海道南西沖地震。壊滅的な被害を受けた島には巨額の復興費が投じられ、奥尻ワイナリーの親会社である海老原建設も復興特需に沸きました。とはいえ、この状況は長くは続かないと感じていた同社は「復興後も雇用の受け皿となる新たな産業を」と新規事業に着手。奥尻ブランドのワイン造りに挑戦すべく、葡萄栽培をスタートさせました。奥尻の土地に合う栽培方法を模索しながら、ひとつひとつの工程を丁寧に行い、ワインの質を高めていく、この途方もない挑戦の末、「奥尻ワイン」は誕生しました。
エチケットはワインにとっての顔。このデザインは、「奥尻らしさを表現したい」という依頼のもと、5社でのコンペを経て決定されました。「島の形をモチーフにしたものや波を表現したデザインなど、素晴らしい提案をいただきましたが、作り手として一番イメージに合うものがこのデザインでした」と、奥尻ワイナリーの常務取締役・菅川仁さんは話します。 奥尻島のブナ林がたたえる豊かな水と海から吹きつける風に育てられた葡萄は、ミネラル分を多く含み、「潮(海)の香りがする」と道内外の愛好家からも高い評価を得ています。「北海道産ワインの醸造地の一つとして、世界に認められるようなワイン造りに邁進したい」という作り手の思いと、奥尻島の象徴的な絶景をボトルに携えて、離島のワインは世界に羽ばたいています。
◆工場(見学は前日までに要予約)/奥尻町字湯浜300 TEL 01397-3-1414