新冠町でピーマンの生産が始まったのは、約40年前のことです。年々生産量が増えていく中で、土づくりからこだわり、規格の統一化を図るなど、ブランドピーマンとしての地位を確立しました。2016年には、収穫したピーマンを選別・仕分け・箱詰めする選果場の新設を機に、シンボルとなるロゴを一新することに。
「にいかっぷピーマンのブランドを象徴するデザインを作り、その価値を見た目にもしっかり反映させたい」と、制作を依頼したのは株式会社ファームステッド(本社/帯広)。代表取締役でクリエイティブディレクターの長岡淳一さんは、デザインで農業と地域を発信するモデルを作り、農業のブランディングや、全国各地での講演活動も精力的に行う、いわば“この道のプロフェッショナル”です。
「制作の過程で何度も現地に通って、農協の担当者やピーマン部会の方々と対話を重ねました」と振り返る長岡さん。実際に栽培している様子も見学し、生産者たちがピーマンづくりに傾ける情熱を肌で感じたと言います。さらに新冠町では当時、道の駅でピーマンのソフトクリームを販売するなど、特産品のピーマンによるまちおこしに力を入れていたため、役場にも足を運びました。それは長岡さんにとって「にいかっぷピーマン」への理解を深め、地元の人たちと“共感”を積み重ねていく大切な時間でした。
半年以上かけて、構想を含めると100案にもおよぶアイデアの中から最終的に選ばれたロゴマークは「生産者」「農協」「行政」三者を3つの輪に見立て、つながり、交わり、結ばれてゆくイメージを形にしたもの。「みんなでにいかっぷピーマンを大切に育てていこうという気持ち、絆を表現しました。全体のフォルムはもちろんピーマンです」。丸みを帯びたローマ字やひらがなもこだわりの一つ。「生産者の方々のやさしさに触れて、温かみのある書体がいいな、と」。
町の花・ツツジを連想させる紫をアクセントカラーに用いることで、新冠町で作られたピーマンであることをさりげなく表現したと言います。
「日本中で生産されているピーマンですが、ダンボールや店舗陳列用のパッケージに印刷されているロゴを見ると、新冠産であることが一目でわかります」と語るのは、新冠町農協農産課の課長・畠山拓也さん。「今後も『にいかっぷピーマン』のブランド価値を高め、知名度の向上につながる取り組みを継続し、成果を上げていきたい」。挑戦は続きます。
ピーマン部会の視察や講習会の記念撮影には、ロゴ入りのフラッグを持参。中央に掲げている。
ロゴデザインはピーマンのグリーンと、新冠町の花であるツツジの紫を組み合わせた2色使い。視認性が良く、親しみやすい丸みを帯びたフォルムも魅力。デザインを手がけた株式会社ファームステッドは、生産者の想いをカタチにするため、現場に通い、風土を感じ、生産者と顔を合わせて話をすることを大切にしたデザイン提案で、農業や第一産業の活性化に取り組んでいる。