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前田育子/白老町

大漁旗を再利用してつくる服やバッグ

2021.07.14 UPDATE
作る人

 
 大漁旗をなびかせながら大海原を渡る何艘もの漁船。その勇壮な姿は、白老町に工房を構える陶芸家、前田育子さんが子どもの頃によく見た情景です。
 廃船で使われなくなった大漁旗を再利用し、鮮やかな図柄を存分に生かしたバッグや服をデザインする「大漁育(Tairyo hug)」。前田さんが立ち上げたこのプロジェクトは、今年で10年目を迎えます。

自然に囲まれた前田さんの工房。動植物の呼吸を感じながら作品づくりに没頭しているそう

 「当初は本格的にやる予定ではなかったのですが、漁師の方とお話をする機会があって、皆さんが植樹活動を行っていることを知ったんです」と前田さん。

前田さんの本業は陶芸家。「陶芸作品のお客さまは、大漁育も応援してくれますし、大漁育をきっかけに陶芸作品を知ってくれる方もいらっしゃるんですよ」

 豊かな森林は豊かな海を作ります。雨水が森林の栄養分を川へと運び、やがて海に流れ着き、魚の繁殖につながります。森と海の自然のサイクルに刺激を受けて、「売上金の一部を植樹に寄付することで、大漁旗が形を変えて海に還元できる」と「大漁育」を本格始動させました。

大漁旗のアロハシャツ。後ろのデザインもインパクト大!

鮮やかな色合いが魅力的なトートバッグ

 「鶴や亀など、大漁旗には縁起物の図柄が鮮やかに描かれていて、色使いや佇まいは、ある種、土着的。地元の素材を生かす、という意味では陶芸と通じるものがあります」と前田さん。工房には毎年、白老町をはじめ、登別市や苫小牧市、時には姫路市など、道内外から大漁旗が届きます。

前田さんの工房内には大漁旗の商品がずらり。本業である陶芸作品も見ることができます

 「手直しの跡や、自らアレンジして旗の縁にフリンジをつけているものなどを見ると感動するんですよね」と、大漁旗が歩んできた歴史に思いを馳せると胸が熱くなるそう。
 「私にとって大漁旗は身近な存在でしたが、手染めで作られる柄は一つとして同じものがなく、改めて見ると本当に面白くて魅力的。創作意欲が湧きますし大漁旗からたくさんのエネルギーをもらっています」

Profile
 

前田 育子
(まえだ いくこ)

1968年、白老町生まれ。道内外に多くのファンを持つ人気陶芸家。大漁育の商品は工房(白老郡白老町緑町702/TEL090-9522-3688 ※ 要事前連絡)や、白老ねっと商店(shop-shiraoi.net/)でも購入可能。

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