砂川市内を通る国道沿いをメインに、菓子メーカーや菓子店が軒を連ねるその街並みは「砂川スイートロード」と呼ばれ、観光客からも注目されています。そのエリアにあって、老舗のほんだ菓子司が誇るのはりんごを使ったお菓子。中でもアップルパイは評判で、「アップルパイといえばほんだ、ほんだといえばアップルパイ」と多くの人が思い浮かべる看板商品です。
「りんごのお菓子で日本一を目指す」をモットーに、北海道産の素材と自家製にこだわった商品開発に取り組む中で生まれたのが「香西農園のおいもと紅玉りんごのパイ」。同社3代目・代表取締役の本田啓輔さんに商品作りのきっかけを尋ねると「当時、北海道でほとんど生産されていなかったさつまいもが滝川で生産されていることを知り、新しいお菓子を作ってみようと考えました。さつまいもは私たちが得意とするりんごやパイとの相性が良く、組み合わせることでおいしい商品が作れると確信したからです」。
商品力をより高めてくれるパッケージは「北海道のおいしいつながりパッケージデザイン展2015」に出展して広くデザインを募りました。そこに応募したのがアートディレクターの佐藤健一さん(現在AMAYADORI代表)でした。デザインは見事グランプリを受賞。「さつまいもの優しい甘さと、りんごのほどよい酸味が融合した、このおいしさをどう表現すべきかと考えた時に、文字通りさつまいもとりんごを合体させたビジュアルが思い浮かびました」と語ります。とはいえ、すぐにはピンとこない不思議なアイコン。しかし、それも佐藤さんの“狙い”だったそうで「少し眺めているうちにさつまいもとりんご…あぁ、なるほどと、認識できるマークにしたんです。『?』(疑問)から『!』(発見)の流れを作ることで、印象に残るパッケージデザインを目指しました」。同時に、文字が読めない小さな子どもや、日本語が分からない外国人にも理解できることから、このデザインに着地。佐藤さんは、初めての打ち合わせで本田さんがかけてくれた「デザイナーさんが考えたデザインですから、このまま修正せずに作りましょう」の言葉に感動したことを今でも覚えていると言います。商品のおいしさはもちろんのこと、「本田さんが信頼し、尊重してくれたからこそパッケージデザインの強さやインパクトをキープできた」と振り返ります。
“生み出す”ものは違えど、作り手としてお互いの仕事を敬う姿勢があってこその“完成形”。売れ行きも好調だと言います。 「良い商品だけでは売れませんし、良いデザインだけでも売れません。総合力というと語弊があるかもしれませんが、良い商品を良いデザインで、さらに売れるための訴求をしていくことが大切だと思っています」と本田さん。今年秋にはパッケージはそのままに商品のリニューアルを予定しているのだとか。よりおいしく進化した「香西農園のおいもと紅玉りんごのパイ」に期待が膨らみます。
パッケージデザインを担当した佐藤さんが心がけているのは、情報を盛り込み過ぎないこと。「香西農園のおいもと紅玉りんごのパイ」は素材の良さを活かした商品ということで、デザインも極力シンプルにと考えたそう。
おいしさはもちろんのこと、見た目も気になる素敵なお菓子が並ぶ店内。写真は昨年リニューアルした滝川サロン。