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北芸亭・寄席演芸講座「講師インタビュー」

2023.03.31 UPDATE

 

昔昔亭A太郎interview

Q. A太郎師匠はSNSを使った発信を積極的にされていますよね。

A. SNSの力はやっぱりすごいと思います。僕も恥ずかしながらインスタで近況を発信したりしていますが、寄席やイベントで「いつもインスタ見てます」なんて声をかけられることも増えました。

Q. コロナ禍の中ではSNSを使った発信が世の中的にも主流になりましたね。

A. コロナ禍にあった当時、寄席から年配のお客さんの姿が見えなくなりました。一方で家時間を過ごす中でYouTubeやインスタなどを通して、これまで「落語を見たことがなかった」という若い世代が落語の面白さを知り、寄席に足を運んでくれたりもしました。 やっと少しずつ元の暮らしに戻りつつある今、ずーっと落語を支えてくださったお客さんにも帰ってきていただきたいですし、ここ数年で落語の魅力を感じてくださったお客さんにも定着して欲しい。両方がこれから先も落語を楽しんでもらえるように、噺家として芸を磨くのはもちろんのこと、広報活動もしっかり努めていきたいと思っています。

Q. 本日の講座はとても盛況でしたね。ワークショップの意義や、現在の心境を教えてください。

A. 落語をよく知らないのに、楽しめるだろうか、古典落語は難しそう、寄席は敷居が高い……など落語に対して、そんな心配やイメージを持つ方もいらっしゃると思いますが、僕が講座を通して伝えたいのは「落語って楽しいよ」「気構えなくてもいいよ」ということだけです。だからなるべく面白く、丁寧に、伝えていこうと思いながら本日の講座に臨みました。
今回のワークショップの参加者は12名ということで、距離感も近いですから、僕の熱量が伝わりやすかったのではないかと思っています。
お客さんも喜んでくれていて、とても嬉しかったですね。インスタを見てきてくださった方もいたみたいなので、改めてちゃんと発信しなくてはと思いました(笑)。今回の参加者は比較的若い方が割合を占めていました。ようやく世の中も通常の流れに戻りつつありますし、年配の方たちにもぜひ戻ってきて欲しいですよね。

 


 
 

神田京子interview

Q. 神田京子先生の中で、講談を聞く人が増えてきたという実感はありますか?

A. 今、私たちは時代の転換期を生きています。話題にのぼる歴史上の偉人も、心に響く物語も、これまでとは少しずつ変化してきているかも知れません。「名前は聞いたことがあるけれど、どんな人なのだろう?」「どんな噺だったっけ?」と興味を抱いた方が、講談で学びの入り口として足を運んでくれるケースも少しずつ増えてきている気がします。講談ブームも手伝って、多種多様な入り方で講談を聞き始めた若い層もいます。その人口は少しずつですが増えてきていますね。

Q. 神田京子先生は童謡詩人・金子みすゞの人生を講談に仕立て、2021年度の文化庁芸術祭で優秀賞を受賞されましたね。

A. 3年前、私は東京から山口へと住まいを移しました。ちょうどその頃、コロナ禍が拡大し公演が次々とキャンセルとなりました。せっかく手に入った膨大な時間。移住先は新天地。配信など…仕事を生みだす努力をするよりも、自分の心の声を徹底的に聞く時間に当てました。本当にやりたいことはなんだったのだろうと。そんな中出合ったのが、山口県出身の金子みすゞさんの詩だったのです。コロナ禍という未曾有の経験をし、それまでの当たり前が当たり前ではなくなった。「努力すれば出世できる」「拳を突き上げて討ち入りじゃ〜!」と士気を鼓舞するメッセージは虚しく感じていき、人間の拳をも包み込むような講談があっても良いんじゃないかと思うようになったんです。金子みすゞさんの詩も人生もまさにそれでした。先行きの見えない混沌とした時代だからこそ、優しく強く前向きな世界を多くの人に届けたい。そんな思いをぶつけた講談が「金子みすゞ伝」です。受賞できて正直嬉しかったです。

Q. 「ワクワク講談塾」と題したワークショップですが、どのような内容になりそうですか?

A. 講談の「聞く耳」を作っていける楽しい講座にしたいと思っています。ワークショップは講談の楽しみ方を皆さんの心と身体に落とし込むことができる貴重な機会。私たち講談師にとっても、講談を広めるための大切な種蒔きであり、新たなお客さまとの出会いの場です。今回のワークショップ参加者一人ひとりがきっかけになって、北海道内で100人、1000人と講談に興味関心を持つ方が増えることを期待しています。

 


 
 

玉川太福interview

Q. 太福さんが最初に浪曲に魅せられたのは、どういうきっかけでしたか?

A. 若い頃から映画とかお芝居が好きだったんですね。それで、お笑いや演劇も好きになって、表現者とか作家として食べて行きたかったんです。でも、なかなか難しくて。テレビの世界が好きだったんですが、舞台もいいなと思って勉強していました。 それで、人に勧められて落語を聞くようになったんですね。浅草にある定席小屋の「木馬亭」ってところへ行きまして、そこで初めて浪曲を聴いたのですが、その声の振動や迫力がすごくて。もう、うわぁ〜と感動して。それで浪曲に魅せられました。

Q. 落語や演劇、その他のお笑いと浪曲はどう違うと思いましたか?

A. 広く浅くではありますが、それまで映画とかお芝居とか、いろんなものを見聞きしていました。浪曲っていうのは、そういったものとまるで違うというか。もともと作家志望で物語を考えたりすることが好きだったのですが、浪曲の世界で描かれている義理人情の話しとか侠客伝とか、そういったものにはまったく興味がありませんでした。現代的な新しいお笑いや新しい表現ばかり考えていたんですよ。ところが、清水次郎長伝とか天保水滸伝なんて聞かされて、まったく興味のない世界なのに、それがわずか30分の間に、もう前のめりになって、食らいつくようにケラケラ笑いながら聞いてたんですよ。26歳くらいだったのかな。それなりに物心もついて大人になってから見聞きした物の中で、こんなに我を忘れて、童心に返ったように表現そのものを楽しむという経験が記憶にないくらい。本当に衝撃的でした。「何だろう?この芸のすごさは」ってわからないからこそ、どんどん引き込まれていったんですね。この世界で、自分の新作をぶつけたらどうなるか、みたいな。そこから始まりました。

Q. 本日のワークショップは、どのような内容になりそうですか?

A. 浪曲は頭で考えるよりも、身を委ねて感じてもらうのが大事。その上で、もう少し興味を深掘りしたい方に向けて基本的な情報を紹介し、浪曲をより楽しんでもらえるような材料にしていただけたら。何より、ワークショップは浪曲の迫力を間近で体感していただける絶好の場所。札幌の皆さんに私が初めて浪曲に出合ったときのような、原始的な衝撃を体験してもらえたらうれしいですね。

 


 
 

瀧川鯉丸interview

Q. 鯉丸さんが落語の道を志したきっかけを教えてください。

A. 私が初めて落語を聞いたのは、高校3年生の時です。ラジオをつけながら受験勉強をしていたところ、たまたま古今亭志ん朝師匠の「芝浜」が流れてきたんです。それまで落語と言えば、着物を着た人が何か一人で喋っているくらいの認識だったのですが、ラジオから流れる夫婦の話に心がぐっと掴まれまして。景色が広がっていくような、そんな感動を覚えました。大学時代は落研に入るのですが、当初は演者側ではなく、たくさん落語を聞こうという気軽な気持ちでした。そうした中で先輩の一人が落語家になると決めている方がいて、学内に高座を作り自身で披露されていたんです。その姿を見て、「落語家になるという選択肢があるのか」と気づき、少しずつですが落語家の道を意識するようになりました。私が初めて人前で落語をしたのが学園祭、お祭りムードの効果もあったと思いますが、たくさんお客さんが笑ってくれて、心が定まっていました。
映画や小説も好きですが、何も構えずに楽しめるのが自分にとって落語だったのだと思います。

Q. 鯉丸さんは子供たちの前で披露する機会も非常に多いですよね。

A. 子どもたちにはとにかく楽しんでもらいたいですよね。子どもたちの記憶の中に、「昔、落語を聞いたけれど、楽しかったなぁ」という落語の種を少しでも植えることができれば、もしかしたら10年後、20年後、別な機会で落語を聞いた時により一層好きになってくれるかもしれないですから。落語はみなさんが思っているよりもずっと身近な存在です。私たちは着物を着て高座に上がりますが、昔は着物が普段着だったわけで。本来ならば私がパーカーで高座に上がるくらいの感覚で楽しんでもらいたいくらいです(笑)。落語は大衆演芸なので、特別な気構えは一切不要です。

Q. 本日のワークショップは、どのような内容になりそうですか?

A. 北海道を訪れるたびに実感するのは、お客さまの歓迎ムードや明るさです。昨日は深川市の小学校で落語講座を行いましたが、皆さんとても楽しんでくれて、私自身も非常に充実した時間でした。ワークショップは落語に興味を持った人同士が接点を持つ場です。年齢もキャリアも異なる皆さんが一堂に会する場所に参加できることを非常にうれしく思います。

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