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伝わる文化

神楽ばちあたり的解釈の巻

すーさんの「伝わる文化」おかわり【二杯目】

2021.12.10 UPDATE

今回のお題は神楽です。また難しいテーマを…

「神楽」と聞いて何を思い出すでしょうか。
多くの方々が「神社で演じられる何らかの芸能」と思うのではないでしょうか。
では神社で演じられる芸能って何??
あるひとは巫女さんの優雅な舞を、また別の人は舞手が荒々しく舞台を踏む姿を思い浮かべるかもしれません。
ひとくちに「神楽」と言っても様々な形がありましてですね…実はどこから説明していいやらです。

写真は士別市に伝わる「日向神代神楽」
(以下同)

「神楽」といえば、神様の前に供される芸能だと強引にまとめることにします。
巫女神楽や太神楽や湯立神楽やらいろいろですので何かもう神事に関わるものだととりあえずはぼんやり思いましょう。
なんのために神楽を神様に奉納するの?というと、長寿長命祈願だったり、魂鎮めであったり、それもさまざまです。
どこかの神社で神楽に出会ったら、その神楽の由来を訊ねて、その答えを聞いて、それぞれの神楽をここではこうなんだと理解するのが一番よろしいのではないかと思います。

さて。
このコラムの話を持ってきてくださったMさんが、「神楽にエロさを感じる」と仰るので、ちょっと考えました。
神楽の演目には古事記を題材にしたものが多いのですが、古事記というものは表現がなんというか大変におおらかなのです。
いやそんなにあからさまに言っていいのか、と思うくらいには。
気になる方は古事記の原文と戦ってみることをお勧めします。
ただ、題材がそういうのだからエロティシズムが漂うのでは、という答えではMさんは納得してくれませんでした。
そこでもうちょっと考えました。
神楽は様々なひとの手によって伝えられているのですが、いわゆる巫女神楽を伝えてきたのは猿(猨)女君(さるめのきみ)氏だと言われています。
この猿女君の一族は、天鈿女命(あめのうずめのみこと)の子孫といわれるひとびとです。
天鈿女命は天照大神(あまてらすおおみかみ)が岩戸にお隠れになったときに、策略の一環としてその岩戸の前で舞った方でもあります。
どんな舞だったかというと、面白おかしくというか、まあそのかなりきわどい、言うところのエロティックな舞だったようです。
それを見て他の神様たち(主に男神)がやんやと囃し立てるのですから、もうどこの昭和のセクハラ宴会だよと。おや誰か来たようだ。
この舞が日本の芸能の始まりである、なんてことも言われたりしているのですが、その天鈿女命さんの舞を受け継いだ神楽というものは、やはりどこかエロティックなところがあってしかるべきなのではないでしょうか(あくまでも個人の感想です)。
おおらかな神様たちにとっては健康的な性=生命を喚起させる舞ではなかったかと思います。
その、「命の躍動」は今の神楽にも確実に受け継がれていますよね。

ちなみにこの天鈿女命さんは、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと=天孫)が天降る際に、御供をした五柱の神様のうちのおひとりで、紅一点。
日本の戦隊モノの構成はここからだったりするんじゃないかと妄想しましたすみません。

実際の神楽をみるときには、そんなめんどくさいことを考えずに、楽しんでもらえればと思います。
もちろん、神楽は神様のために奉納するのですから、私たちが楽しむのは実はそのおこぼれであることを忘れずに。

角 美弥子(すみ みやこ)
北海道教育大学岩見沢校芸術・スポーツビジネス専攻准教授。
修羅の国出身。無形の文化財の保存継承を研究対象とする。授業では正しい琵琶の見分け方に時間を費やす。好きな能楽の曲は「猩々」。酌めども尽きぬ甕が欲しい。
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