朱色に白抜きで描かれた「いかめし」フォントのレトロな佇まい。対角線上に配置された波とイカをモチーフにした図柄の可愛らしさ。少ない色数ながらも、インパクトと懐かしさが同居するこの魅力的なデザインは、森町を拠点とするいかめし阿部商店が製造する「いかめし」の掛け紙です。
生イカの胴にうるち米ともち米を詰めて、甘辛のたれでじっくり炊き上げた、いかめし阿部商店の「元祖 森名物いかめし」
同社の創業は1903(明治36)年。森駅の開業に合わせて駅構内営業の許可を得て、当時経営していた阿部旅館内に「阿部弁当部」を発足したのがはじまりです。
一番最初の掛け紙。右上に「一億 一列 一歩調」という戦時下標語が書かれている
いかめしの誕生は1941(昭和16)年のこと。第二次世界大戦中の食糧統制によって深刻化する米不足の中で、創業者の阿部恵三男さんの妻・静子さんがお米を節約した駅弁として考案したのが「いかめし」でした。最初の掛け紙は、お米が詰まったいかめしのイラストに戦時下標語が書かれたデザイン。いかめしは戦地に向かう兵士たちから「腹持ちが良い」と大好評でした。
掛け紙デザインの誕生と同じくらい古くからあるという「いかめしボーイくん」。顔の部分は煮込んだイカをイメージしたもの
その後、昭和30年頃に現在の掛け紙デザインに。1913(大正2)年創業の函館の印刷会社「ハコー印刷」の社員がデザインしたパッケージが、60年以上に渡り使用されています。 変わらないのは、デザインだけではありません。いかめしのサイズに合わせて作られたという容器は同社のオリジナルサイズ。この容器の大きさもまた、ロゴと同じく不変であり続けています。
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駅構内での販売から始まったいかめしは、二代目の今井俊治さんが実演販売に力を注ぎ、全国の百貨店や催事場を飛び回ったことで、認知・人気を拡大。2020年に三代目を継いだ娘の今井麻椰さんもまた、コロナ禍の中で通信販売をスタートさせ、おかきなどの新商品やグッズを展開するなど、挑戦は続いています。
三代目社長の今井麻椰さん。幼い頃から慣れ親しんでいた掛け紙デザインは「レトロで可愛く、歴史あるデザインを変えずにずっと続けていきたい」と今井さん。Tシャツも数種類あり、こちらも通販サイトで販売中!
昭和、平成、そして令和。流れゆく時代の中、新たな展開に向けて積極的に取り組みながらも、同社が大切にしているのは「味」と「見た目」を守り続けること。いかめし阿部商店の掛け紙には、積み重ねてきた老舗の歴史と矜持があります。
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