北のとびら on WEB

アートファイル

駒澤千波 KOMAZAWA CHINAMI

暮らしの中の感覚や感情がモチーフに

2024.12.02 UPDATE

 子どもの頃から絵を描くことが好きだった私は、中学時代に北海道近代美術館で行われた「東山魁夷展」に行き、初めて日本画と出会いました。「蝦夷の白い馬シリーズ」に一目惚れし、部屋にポスターを貼ったり、お小遣いを貯めて画集を買ったり。絵の具の色や絵肌の美しさに魅了され、日本画に興味を抱き始めました。中学3年生の時に美術教師から将来の選択肢のひとつとして美術系の大学を紹介され、美術を自分の進路として考えるようになりました。

「ここにはいない」
いるかもしれないし、いないかもしれない、ここかもしれないし、どこでもないかもしれない、そんな不思議な夜の森のひととき

 高校時代から美術の予備校に通い、浪人を経て北海道教育大学芸術文化課程美術コースに進学。大学では日本画の研究室に所属していました。
 大学時代は「描くこと」を中心に過ごしていましたが、卒業後は「仕事」と「生活」が中心。「描くこと」の優先順位が低くなり、制作を続けることが当たり前ではないことを知りました。これは、ある種のカルチャーショックだったと思います。そこで私は「何を描くか」だけではなく「継続すること」を意識するようになりました。公募展や個展、グループ展など展示機会が定期的にあったことや、制作仲間たちのおかげで20年間描き続けることができています。

「longevity creature live」
広報さっぽろのために描いた1枚です。この号のテーマが「人生のエンディングまで考える」だったので、命をテーマに、長寿のいきものを集めました。

 日本画の魅力は、絵具自身が持つ素材感と、色の美しさにあると思います。岩絵具や墨、和紙や絹などの素材は、日本画の特徴の一つ。現代において日本画の定義は作家によって異なりますが、私は使用する素材や技法によるものが大きいのではと考えています。

「無明の森で」
ここではないどこかは、すぐそばに

 作品のモチーフになるのは、日々の生活。日常の中で自分の感情が動いた瞬間や、ふとした時に感じる感情や感覚から発想を広げ、作品テーマを決めることも多いです。
 最近は、木、絹、和紙など様々な素材に挑戦していて、譲ってもらった夜光貝のカケラを白い絵具として使用しています。絵具自身が持つ実在感と作品世界の融合を目指しています。
 1年前から始めた木のシリーズは、木目や木の形を見ながら、何を描こうと考えたり、木目から想像を膨らませたりする時間が楽しいです。描きながら木の力をいただいている気持ちになり、それが創作の原動力になっています。

〈木のシリーズ〉
「クンネレㇰカムイ」「チチッチュカムイ」
北海道の木に北海道のいきものを描くシリーズです。夜光貝のかけらを使っているので、近くで見るとキラキラします。

 今回の個展テーマは「つなぐ、つなげる」。4歳の娘がひらがなに興味を持ち出したので、「今しかない」と思い、つくり始めた「あいうえお」がメイン作品になります。ひらがなの一文字一文字、娘と一緒にしりとりのように発想を広げて絵文字を描いています。個展スタート時は半分、年明けの展示替えでは「わをん」までの50音を全て揃えますので、ぜひ足を運んでください。

「あいうえお」
ひらがなを覚えたての子どもと一緒に、音から始まるものを探しながら描いています。

Profile

駒澤千波

美唄市生まれ、石狩市在住。身近な感覚や感情を出発点に、命や物語を内包した作品づくりに取り組んでいる。2004年、北海道教育大学札幌校芸術文化課程美術コース卒業、2006年に同大学教育学研究科教科教育専攻美術教育専修修了。北海道美術協会会員、北の日本画展会員、北海道イラストレーターズクラブアルファ会員。

●ホームページ
https://chinamikomazawa.com/

北海道文化財団アートスペース企画展 vol.58 駒澤千波『はじまりの音』
2024.12.16~2025.2.12 9:00~17:00
※土日祝年末年始(12/30〜1/3)休館 ※都合により臨時休館する場合があります。
場所/札幌市中央区大通西5丁目11大五ビル3F
問い合わせ/011-272-0501

あわせて読みたい
トップページ
北のとびら on WEB
COPYRIGHT 2021.HOKKAIDO ARTIST FOUNDATION., ALL RIGHTS RESERVED.